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Channel: 自閉症児の母の後悔

●8月のカナー君(その1)

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8月某日




前夜の午後7時から起きている。


亀の水槽にポットのお湯を入れようとしていたので慌てて止めると、それが気に入らなかったようで、つかみかかってきて倒された。両腕をつかまれて身動きできない。




ふと、カナー君が小さい頃は、課題から逃げようとしたカナー君を、後ろから抱きこむように、あるいは壁と私の間にはさむようにして、こうして身動きとれないようにしたことがあったのを思い出す。

逆襲されてる気分。(^_^;)




行動援護の日。

いつもと違う車でお迎えにこられたスタッフさん。

車中にカナー君の前に利用されていたお子さんのゴミが散乱していて、そのゴミを事業所に捨てに行くと言い張ったらしい。

開始時間ギリギリに美術教室に到着。すでに隣接する施設の方がいらっしゃって、カナー君はウロウロして中に入らなかったらしい。

終わりの時間が近づいてあわてて書き始め、終わってから喫茶でお昼を食べて帰宅。


かなり眠そうなので、夕方4時におやつと薬を与えた。

午後5時までに就寝。午後11時起床。夕食を食べ、薬は飲まずに入浴。


  


 ★☆★






8月某日




前夜の午後10時から起きている。


朝から資源ゴミを捨てたがり、燃えるゴミの日だと説明しても納得してくれず、倒された。


かなりイライラしていた。

燃えるゴミの中に昔の写真が入っていた。最近、いろんなものを捨てたがる。


昼食を食べて午後2時に就寝。




主治医の日。


カナー君は寝ていたので、家に残して母だけ受診。

抗てんかん薬を処方してもらう。

朝ルボックス25㎎とバレリンシロップ1ml、夜ルボックス75㎎とバレリンシロップ1ml。


午後9時におきて、夕食を食べた。


ルボックス75㎎錠は、「ちょっきん」と小さくすることを要求したので少しだけ割った。シロップは嫌がらずに飲んだ。


バレリンシロップを服用後、気をつけて見守っていたが、機嫌はよさげ。

独り言(ビデオか何かの再現)も多いし、動揺やサザエさんをよく歌う。

少し眠そう。目がとろんとしている。




「ファミリーマート」というので、「明日ね。」というと、「おかあさん、ファミリーマート、ぼく、おうち、おるすばん」というので、「何買うの?」と聞くと、「プラゴミ」といった。

近所のゴミステーションには捨てられないと納得したのか、コンビニのプラゴミ用ゴミ箱ならいいと思ったのかもしれない。








 ★☆★






8月某日




前夜の午後11時から起きている。


朝6時過ぎに階段下の物置をごそごそしていたかと思うと、資源ゴミの袋を3つかかえてゴミステーションまで走っていった。(その日は資源ゴミの日ではない)

母はパジャマだったので、慌てて父に声をかけて頼み、追いかけた父と一緒にゴミを持ち帰ってきた。

資源ゴミの日は1週間後だとカレンダーに書いたり、市町村のゴミの日の案内を見せて伝えても納得してくれない。そのうち怒ってつかみかかってきた。


そういえば、アスペ君も中学生の頃、○週目の土曜日とかを理解していなくて、説明したことがあったのを思い出す。しばらく色々ありそうな予感。




今日、アスペ君が帰省した。

昔、カナー君がプールでお世話になったなみ君とプールへおでかけ。


こうして社会人になっても声をかけてくれるのは本当にありがたい。

なみ君と会うのは久々なので、アスペ君にも同行をお願いする。


スライダーのところで、いろいろご面倒をおかけしたようだが、楽しく過ごせたよう。


なみ君も「なつかしかったです。」といってくれた。


アスペ君によると、「少し大変だったけど、なみ君といっぱい話せて楽しかったよ。」とのこと。




夕飯を食べる前に自室で寝そうになっていたので、あわてて薬だけ飲ませた。


夕食を食べずに午後8時半すぎに就寝。


●8月のカナー君(その2)

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8月某日


起床時間は不明。たぶん早朝。先月要望があった隣県の屋内プールへ出かけた。

アスペ君も一緒に家族4人で。
結構混んでいたが、スライダーを3回ほどすべり3時間ほど堪能した。
なかなか帰りたがらず、チビッコプールで遊びたがったので他のお子さんにぶつからないようにガードするなど結構大変だった。
午後12時頃就寝。


★☆★


8月某日


午前4時過ぎに起床。夕飯、入浴、朝食を一人で済ませて薬を飲んでいたが、バレリンシロップだけは勝手にのまないように隠していたので母が起きてから飲ませた。
資源ゴミも車に乗せておいたので、無事。
行動援護の日。が、スタッフさんが病気なので、お休み。特に混乱なし。
ポットのお湯をじょうろに入れて、ひとつのプランターにかけることが多い。数日前は亀の水槽に入れようとして私が止めたから?
「あか、あちち」といいながらプランターのところへいく。
「あちちだよ。しないよ。」といってみるがやめない。
気をそらそうと、ホースで水をかけてやると喜ぶ。
イライラはない。
午後9時~10時に入浴せずに就寝。


★☆★


8月某日


午前4時頃に起床。入浴してパジャマに着替える。8時頃に朝食を食べて、歯磨きをして洋服に着替える。
夕方に散歩。公園でブランコにのって、途中ゴミを拾って、自販機で捨てる。

缶コーヒーを2本買って、母に1本くれた。そこで飲んで、帰宅。

黄緑と水色を間違っていたことに最近気づいたようで、よく水色を指して「きみどり」といったり、黄緑をさして「みずいろ」と繰り返す。
午後11時すぎに就寝。


●バブーさんとのメール(感じる、思う、考えるについて)

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さて、久々のバブーさん登場です。
今回は、私が最近気になっていることについて、やりとりをお付き合いいただきました。


~~~~~~~~~~


バブーさんへ


お久しぶりです。
実は、最近色々と考えていることがあるのですが、聞いてもらえますか?

「感じる」「思う」「考える」ということについてなんですけど。
表現方法といったことは排除して、純粋にその行為についてなんですけどね。


まず、ヤフー辞書(http://dic.yahoo.co.jp/ )で調べてみました。


「思う」について。(http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E6%80%9D%E3%81%86&stype=1&dtype=0

1 ある物事について考えをもつ。考える。
  判断する。信じる。
  決心する。決意する。
  あやしむ。疑う。

2 眼前にない物事について、心を働かせる。
  推量する。予想する。想像する。
  思い出す。追想する。回顧する。

3 願う。希望する。

4 心にかける。心配する。気にする。

5 慕う。愛する。恋する。

6 ある感じを心にもつ。感じる。

7 表情に出す。そういう顔つきをする。


「考える」と「感じる」も「思う」と同じ意味なんだ・・・。

じゃあ、「考える」で調べてみよう・・・。
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E8%80%83%E3%81%88%E3%82%8B&stype=1&dtype=0

1 知識や経験などに基づいて、筋道を立てて頭を働かせる。
  判断する。結論を導き出す。
  予測する。予想する。想像する。
  意図する。決意する。

2 関係する事柄や事情について、あれこれと思いをめぐらす。

3 工夫する。工夫してつくり出す。

4 問いただして事実を明らかにする。取り調べて罰する。


さらに、「感じる」はどうだろう・・・。
あれ?意味は乗ってないな~。類語を探してみました。
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=%E3%81%8B%E3%82%93%E3%81%98%E3%82%8B&enc=UTF-8&stype=1&dtype=5

感じるの類語:
感付く 気付く 〈敵に〉覚(さと)られる 感じ取る 刺激を受ける 感受 感応 神経が鋭い 

さらにリンク先にいってみると・・・。

感付く:直観が働いて気付く。心づく。

気付く:[1] それまで意識になかったことに、思いが及ぶ。

気がつく。

    [2] 意識を取り戻す。正気(しようき)にかえる。

気がつく。

感じ取る:様子などから直感によって知る。

感受:心で感じとること。

感応:[1] 人々の信心に神仏がこたえること。
   [2] 事に触れて心が感じ動くこと。
    [3] 電気・磁気の誘導の古い言い方。

こうして読んでみると、息子たちは「考える」はよくしているように思うけれど、「思う」「感じる」は、難しいんじゃないかなって思いました。

例えば、アスペ君は、「友達と遊ぶのは楽しい」とよく言います。楽しいって楽しいと感じるってことですよね。
でも、「楽しいってどうやってわかるの?」と聞くと、「笑うから楽しい」と答えます。
嫌な出来事があったときは、「つらいから一人にしてくれ」とか、「ゲームで嫌なことをやっつける」などといいます。
感情表現はしているけれど、私とは違う道筋で表現しているように思えます。

息子たちは感情がないわけではないけれど、自覚したり表現したりするのに私たちよりも、多くの手間や時間がかかっているのではないかなって思うのですが、バブーさんは、どう思われますか?



 ★



ママへ、

これ、
まるでファンタジー小説の精緻に構築された世界観のようだわ。

というのも自閉症のバブーにはこれらの精神機能が一切使えないからねえ、ただただ圧倒されるばかりよ。

そこでまず非自閉症のママに質問。

この壮大な物語における「感じる」「思う」「考える」の反対語ってなあに? 

バブーより



 ★



バブーさんへ


使えないんだ。アスペ君は、話し言葉でよく使うので、機能として使っているように見えてしまうんですよね。

反対語ですか?
えっと、瞬時に浮かぶのは、「感じない」「思わない」「考えない」だけど。あとは、無感覚、無意識、拒否、って感じかな~。


ママより



 ★



ママへ、

そうアスペくんには使えないの。無い機能は使えない。

それがさも機能があって使っているかのように見えるのは、そうねえちょうど落語家さんが扇子一本でいろんなことをするでしょう。名人ともなれば本当に湯気を立てているお蕎麦を食べているかのように見える。

お客さんはそれを見て実際に「わあ何て美味しそう、何だか私も急にお腹が空いてきちゃった」となるから、どうやら相手の脳にはきちんと「彼はお蕎麦を食べている」と認識されているらしい。

でももちろん落語家さんご本人は別にそれでお腹が一杯になる訳ではなく、彼はそういった芸を大勢の方に披露して報酬を頂いて、そのお金で「おまんまを頂いている」と。

それにかなり近いことをアスペくんもバブーもしている。じゃ私たちの商売道具であるところの「扇子」に相当するのは何か? 何だと思うママ。

バブーより



 ★



バブーさんへ


表現に使う小道具という意味ですよね。

そしたら、アスペ君は言葉ですね。
カナー君は、服を噛んだり、怒ったりしたときに、「思っていたことと違うことが起こったんだろうな~」って想像するので、行動かな~。


ママより



 ★



ママへ、

そう正解!

でも小道具とはちょっと違うのね。俳優さんが落語家の役を「演じる」とき扇子を使って落語家っぽく「見せかける」というのならそれは小道具ということになるんでしょうけど。

落語家さんの扇子と手ぬぐいは「私は話芸でこれをどんなものにでもしてご覧に入れます」という芸の象徴だから、懸け離れた形をしてるほどいいんだと思うの。つまりテクニックに対する自信の表れよね。

アスペくんやバブーの場合は、そんな落語とか演劇とか洗練された舞台芸術の話ではなく「だってこれしかないんだもん」と仕方なく毎日いじくり回しているうちに、歳とともに次第に扱いに慣れ、今ではあたかも小道具であるかのように見てもらえるようになった、扇子でもおもちゃでもない単なる「紙きれと木っ端」という感じかしらね。わかるママ?

この点はすごく大切で、くどく念を押しておかないと自閉症の専門家でさえ「アスペルガーの人はある種演技によって普通っぽく見せ掛けてるんですね」とか誤解する人が必ず出てくるのよ。私も実際に専門家に言われたことがあるわ。するとカナーくんの「行動」との共通点が見えなくなってしまうのよ。

自閉症は「欺く」という機能そのものがないんだから、そういう意味では「演じる」も「見せ掛ける」もなく、大道具も小道具もないのよね。なんせ初歩も初歩、ごっこ遊びの段階で早くもつまずいているんですもの。

バブーより



 ★



バブーさんへ


つまり、「彼らは、その時自分が使えるものを駆使して必死で表現している」ということでしょうか。

カナー君の場合は、ときにはかんしゃくっぽく見え、アスペ君の場合は、ときには反抗的に見え・・・。
でも、息子たちからしたら、反抗するつもりなんてなく、そのときはその方法でしか表現できないような状況だったということでしょうか・・・。


ママより



 ★



ママへ、

ママの仰る「その時」使えるものが、「その場その空間」でたまたま使えるものといった行き当たりばったり的なことではなく、「各人の機能に見合った成長のある段階」で無理なく使えるものという意味ならその通りよ。

例えば一歳三ヶ月で既に言葉を喋っていたアスペルガーのバブーなら、大人になって突然ぎゃーと叫んで腕を噛む、みたいな表現手段を採用することはいくらなんでもないということね。

とはいえせっかく習い覚えたバブーの言葉も、大きな体を張ったカナーくんのかんしゃくも、言葉と体どっちを使ったらいいのかよ!というアスペくんの思春期男子の苛立ちも(多分それが反抗に見える)、どれもみな公平に通じないのよ。


バブーより



 ★



バブーさんへ


はい、そうです。
その子が日々の生活の中で使えるようになったものって意味です。

非自閉症者は人とコミュニケーションしているときに、相手の言葉や行動からその人の意図をニュアンスで感じ取ってしまい、そのままやりとりを進めてしまいがちで、そのつど相手の意図を確認することを忘れてしまうんですよね。

だから、表面上は通じ合っているように見えても、質的にずれていき、そのうち「あれ?」って感じになるか、ひどければ「さっき、こう言ったじゃないか」って責め合ってしまうように思います。

ということは、バブーさんやアスペ君は、「思う」、「感じる」、「考える」と、話し言葉や書き言葉などで表現はできるけれども、それは、私たち非自閉症者の「思う」「感じる」「考える」とは違うということですね。

では、どう違うのでしょうか?


ママより



 ★



ママへ、

それそれ、バブーやアスペくんの「意味のある言葉として聞こえる音声」と、カナーくんの「意味がないとしか思えない行動」は、どちらも非自閉症のママに観測された瞬間に初めて「意味という概念」が生じているでしょう?

どこに生じるかといえばもちろん【非自閉症のママの脳内】にだわ。

ところがせっかくママの脳内に生じた「意味(という概念)」も、かのファンタジックな「非」自閉症ワールドに於いて精緻に設定されているところの「言葉」や「行動」の意味するところとどうやら違っているようで、その証拠にしばしば食い違いが生じて責め合いになる・・・・

ということをママは身に染みておわかりなのね。

それもそのはずよ、なぜって「思う」「感じる」「考える」という精神機能が一切使えないのとまったく同じように、自閉症は「意味する」も使えないんですから。

「意味する」の反対語は「意味させない」でいいかしら?

バブーより



 ★



バブーさんへ


なんというか、インパクトのあるお返事でした。
「意味させない」なんて、全く思いつかなかったですよ。(^_^;)

反対語の道筋が、私とは違うんだな~と改めて感じました。
「意味する」も使えないんだ・・・。
いや、これは想像以上の違いですね。
文化の違いくらいでは言い表せないですよ。
姿形は同じだけれども、組み込まれた機能が全く違う2種類のものって感じです。

それにしても、バブーさんは「使えない」ということにどうやって気づかれたのですか?私、アスペ君はまだそのことに気づいていないように思えるのですが。


ママより



 ★



ママへ、

日常生活をしてて体験的に「使えない」と気付いたという訳ではないの。

ある日突然「使えるはずがない!」という驚くべき結論が[E=mc2(二乗) ]的に出て、しかしその結論は、突然とはいえ生きてきた年数分だけの膨大なデータの積み重ねがMAXになって導き出されたもので、まったく覆す余地がなかったということよ。以来どんどん補強される一方なの。

こんな感じだったわ、

幼児のころからテレビを何十年も見続けているのだがちっとも面白くなく、しかしみんなが昨夜のテレビ番組の話をして盛り上がっているのを見て、「うそーっ!ほんとに?」といって雰囲気を壊すのも何だか悪いし、きっとみんなも我慢してわざと楽しそうに話しているのだろう、「偉いなぁ」と心底感心しつつ、それにしてもみんな少々やり過ぎではないか、とかなりうんざりしながらも相づちを打ち話を合わせてきたが、ある日何の気なしにテレビの後ろに回ってみたらコンセントが抜けてて「なんじゃこりゃー!」みたいな。

もちろんそのとき既に診断はされてたけど、自分が自閉症だとはっきり「自覚」したのはこの結論を得てからよ。

それともきっかけとなった具体的なエピソードのこと?

バブーより



 ★



バブーさんへ


そうですね。
具体的なエピソードの方が、私が誤解する危険が低いように思います。
「面白くない」を私の「面白くない」で解釈すると、程度差の話になってしまうように思いますので。


ママより



 ★



ママへ、

ママの仰ることはもっともだわ、バブーが軽はずみだったわ。
じゃひとつ前に戻ってやり直し。

うーん、これは本来言語では説明不可能なことでねえ。

「悟りってなんですか~」という質問と同じで、聞いたママも、答えたバブーもどちらも禅の高僧が側にいたら警策で「渇っ!」って叩かれちゃうわ。

そもそもバブーは「言葉」が使えないということをママに「言葉」でお話ししたと。そしたらママが「言葉」が使えないということにどうやって気付いたのかと「言葉」で質問したと。

ね、このように今私たちは矛盾だらけのデリケートなやりとりをしている訳なのよ。
ひとつ確かなのは、自閉症のバブーが「使えない」ということにあるとき気付いちゃって、気付く前の状態にはもう戻れない、ということ。

ママはこの疑問を保留することができるかしら?
何てったっけそういうのエポケー?(この学術用語はバブーの積極奇異の個人的な知人に教えてもらったのよ)もし出来るようなら話を続けるわ。
ムリならひとまずここで終了しましょう。

バブーより



 ★



バブーさんへ


本当ですね。なんとも難しいやりとりをしていることに気づきました。
エポケー、よくわかりませんが、とりあえず先に進んでみて、ダメなら終了でもいいですか?


ママより



 ★



ママへ、

バブーの「想像」がすべて外れたママのお返事でした。

「想像」が外れることはママとお話しているとしょっちゅうあって(というより100%外れる)、そのたびにバブーは自分には「想像力」がないことが確認できてすごく安心するのよ。

いつも何のためらいもなくエピソードをご紹介するバブーが、今回に限ってそうしないのでママは違和感を覚えたかもしれないわね。でもこの「使えないとわかった」切っ掛けとなったエピソードは、その貴重さに於いて他のエピソードの比ではないの。だから軽々しく口に出せないのよ。

なぜならそれは、自閉症のバブーの脳が生まれて初めて「使えない」という【概念】を見たと同時に「自分」という【究極の概念】をほんの一瞬だけ垣間見た、理屈上自閉症が一瞬だけ「治った」奇跡体験だったからよ。そんなの話したって誰が信じるかしら?ママに一度でも否定されてしまったらもう立ち直れないわ。

けれどもママが質問の前に「文化の違いくらいでは言い表せないですよ。姿形は同じだけれども、組み込まれた機能が全く違う2種類のものって感じです。」と言ってくれたのに「その通り!」と死ぬほど感動して、感動のあまり何とかしてバブーの「感情」を伝えたいと思い、エピソードの代わりにテレビの例え話でお茶を濁そうとしたら、鋭いママにたちまち見抜かれてしまったの。

話を戻すと、あのときバブーは「使えないという概念」と「自閉症という概念」が合わさったそれらの概念の主体というか総元締め、つまり究極の概念としての【使えない自閉症の自分という概念】を一瞬だけ垣間見て、何とかして捉えようとそれはもう必死だったわ。実際に両手を出して捕まえようとしたくらいよ。

非自閉症のママは何をそんな簡単なことで苦労して必死になる必要があるのだろう?と滑稽にすら思うかも知れないけど、それは自閉症が概念を【一瞬たりとも頭にとどめておくことができない】ということが「想像」できなければ当然のことよ。

バブーは手からすり抜けようとする【究極の概念】に実際に覆い被さって、押さえつけて、死にものぐるいでこれを捕獲し、次に大急ぎで「象徴」となるべき「物」捜して、ついに見つけることに成功したの。それが何かはひ・み・つ

今ではその「象徴」をよりどころにして、あのとき一瞬だけ見た「自閉症の自分」という概念を反芻しているわ。これをきちんと意識してやらないといつの間にかスーッと消えてなくなってしまって「私は本当に自閉症なのだろうか・・・」という無明の迷いがでてくるのよ。

ということで、ここでバブーが「使えないとわかっている」言葉を敢えて使って「自閉症という概念」なんかをママに堂々と話せるのはその体験と、象徴となる物と、それと使った日々の確認作業あってのことなのよ。

このことをママに話すよい機会を作ってくれてありがとう。

バブーのことを「文化の違いくらいでは言い表せない、姿形は同じだけれども組み込まれた機能が全く違う2種類のもの」とママが感じる切っ掛けとなった「エピソード(事実)」をいつまでもわすれないよう【概念(気持ちということになるのかな?)】に工夫してくださることを願うわ。

バブーより



 ★



バブーさんへ


『バブーのことを「文化の違いくらいでは言い表せない、姿形は同じだけれども組み込まれた機能が全く違う2種類のもの」とママが感じる切っ掛けとなった「エピソード(事実)」をいつまでもわすれないよう【概念(気持ちということになるのかな?)】に工夫してくださることを願うわ。』


了解です。

バブーさんが一瞬捕まえた概念のように、私も一瞬捕まえた概念なので(といっても、バブーさんよりも逃がしにくく、そして捕まえたものを忘れやすいとは思いますが)、やりとりが進むうちに、つい、忘れてしまったら、また思い出させてくださいね。


ここまでのやりとりを読み直して思ったのは、自閉症者は頭の中に私たち非自閉症者には存在している(自分の味方である)鏡を持たないので、そのとき過ごした相手が鏡となってしまい、その相手次第で映し出される自分の姿はコロコロと変わってしまうということになるのだろうか・・・ということです。

彼らの言葉や行動は、相手によって「~と考えている」「~と感じている」「~と思っている」と「意味」され、彼らは相手や場面によって自分の言葉や行動が違う「意味」を持つことで、何が真実なのかさっぱりわからなくなっていき、混沌とした世界で孤独を味わっているということではないかと。


ママより



 ★



ママへ、

『自閉症者は頭の中に私たち非自閉症者には存在している(自分の味方である)鏡を持たないので、そのとき過ごした相手が鏡となってしまい、その相手次第で映し出される自分の姿はコロコロと変わってしまうということになるのだろうか・・・ということです。彼らの言葉や行動は、相手によって「~と考えている」「~と感じている」「~と思っている」と「意味」され、彼らは相手や場面によって自分の言葉や行動が違う「意味」を持つことで、何が真実なのかさっぱりわからなくなっていき、混沌とした世界で孤独を味わっているということではないかと。』

そう大正解。ママの理解は特にバブーみたいな受動型自閉症の理屈に完璧に合っている。

非自閉症の人の辞書にあるコミュニケーションとは、それぞれが「鏡を盾に」しながら「意味され合う」ことに他ならず、ママが言っているようなことは自閉症の人の身には日常的に起きている。
彼らは生まれ落ちたその瞬間から「意味され合え」と祝福された呪われた人生を歩むことになる。
これさえ解れば、私の積極奇異の個人的な知人が言っていることもわかる、その人は「意味していない私という人間を勝手に意味するな!」とひたすら言い続けている。

では「意味されること」がなぜそれほどのストレスになるのか? 

非自閉症の人のある「感情用語」を使えば簡単に説明できる。
専門家による「誰だって使えない能力を使えと強制されればストレスでしょう?」というお為ごかしの説明より多分それはずっとわかりやすいはず。
何だと思う、ママ?

『やりとりが進むうちに、つい、忘れてしまったら、また思い出させてくださいね。』を了解。方法は講じた。

バブーより



 ★



バブーさんへ


『彼らは生まれ落ちたその瞬間から「意味され合え」と祝福された呪われた人生を歩むことになる。』


これは、胸にズシンときました。


『非自閉症の人のある「感情用語」を使えば簡単に説明できる。専門家による「誰だって使えない能力を使えと強制されればストレスでしょう?」というお為ごかしの説明より多分それはずっとわかりやすいはず。何だと思う、ママ?』


う~ん、怖い・・・かな?


ママより



 ★



ママへ、

残念はずれた。

「怖い」は自閉症のあらゆる「感情の前段階としての刺激の総称」だからあって当たり前で無いも同然。バブーの場合は他に方法がないので、仕方なく「恐怖」の強弱によって適当にそれらしい既存の「感情用語」に振り分けている。しかしそれも非自閉症の人から見ればかなり違和感があるらしい。

例えばバブーは一番恐怖が少ない状態を「幸せ」と呼んでいるが、非自閉症の人からみればどうみてもそうとは思えない状態であって理解に苦しむ、という感想になる。該当するエピソードが一つあるので後で紹介する。

話を戻す。

これはクイズじゃないしママをじらすのは本意ではないので先に結論を言っておくと、「意味しない」自閉症者が「意味された」ときの感情は、おそらく「○○(バブーさんと話し合った結果、読者の皆さんには内緒です。ごめんなさい。)」に相当すると考えられる。もちろんこれはバブーの経験から。

○○は最も原始的で凶暴な刺激で、それだけに概念化には実に面倒な手続きを必要とするはず。なぜなら言語というスマートな表象とは正反対の位置にそれはあるから。

それほどの刺激なので、たとえ概念化能力を持つ非自閉症の人が、○○という既存の「感情用語」を用いて何とか概念化に成功したとしても、完全に沈静化させるのは至難の業なんじゃないかな? 結局は時間が解決するしかないというような。

この○○がどれほど複雑な精神機能なのか。非自閉症の人の辞書的な意味をちょっと当たっただけでバブーは頭がくらくらしてくる。自閉症の「使えない」を遙かに超えた向こうにそれはある。手に余る、というか「振り分け」式で手のひらに乗せてみる(=既存の用語を使う)ことさえできない。

使えるのは最後の手段のみ!みたいな。

それはそれとして。今回ママが言語で捕獲してくれた概念、『私たち非自閉症者には存在している(自分の味方である)鏡』はとても便利!

これを短く『鏡の盾』と言い換えるとバブーにはより分かりやすい。というのも、かなり前にバブーは『「非」自閉症者は見えない鎧に守られていて、その鎧ごしに人とコミュニケートしている。つまり「閉」じているのは自閉症ではなく「非」自閉症である正常な人のほうである』というふうに仮説したことがあった。(昔この仮説を積極奇異の個人的な知人が支持してくれたことがあってバブーは本当に嬉しかった)

バブーのそのときの鎧の外観イメージは無骨な西洋の騎士のそれだったが、『鏡の盾』のおかげでより実体に近づいた気がする。本物はとてもスマートでコンパクト!

解説しよう。この『鏡の盾』の内側(こちら側)には自分の味方であるところの『自分自身』が正面向きで常に映っていて、ふたりで「相談」しながら降りかかる外部刺激を次々に言語で跳ね返している。これでいい?ママ。

バブーより



 ★



バブーさんへ


『「怖い」は自閉症のあらゆる「感情の前段階としての刺激の総称」だからあって当たり前で無いも同然。バブーの場合は他に方法がないので、仕方なく「恐怖」の強弱によって適当にそれらしい既存の「感情用語」に振り分けている。』


アスペ君はよく、「つらい」「悲しい」「傷つく」といった表現をするのですが、「楽しい」「うれしい」とかよりもわかりやすいって言うのですが、バブーさんのこのコメントから、アスペ君も似た感じで振り分けしているのかな~なんて思いました。


『鏡の盾』は、私たち非閉症者にとっても存在を自覚しにくく、その機能の便利さは空気のようになくなって初めて、ないとどれだけ困るか気づかされるようなものだと思います。
容易には気づけないから、「もしなかったら」をなかなか想像できない。想像できる機能はあるのに・・・です。

皮肉なものですね。


感じる、思う、考える、そうした機能を私たち非自閉症がどのように『鏡の盾』を使って操作しているのか、そこを気づけたらな~と思うようになりました。


ところで、バブーさんは、受動型への理解としては合ってるといわれましたが、それは、受動型は、「意味される」ことまでは受け入れられるけど、そのあとの周囲の反応に混乱してしまい、積極奇異型では「意味される」こと自体が受け入れられず、パニックや非社会的な問題行動といった形で周囲に受け止められてしまうということでしょうか?


ママより



 ★



ママへ、

ママは『非自閉症的な解釈』について熟知している上に、その解釈が的外れである可能性について誰よりも身に染みて知っている。そして外れ方を意識的に検証する「習慣」がある。これらが同時に出来るのはママの『鏡の盾』の性能が良く、とても頑丈で、ちょっとやそっとでは壊れない証拠。このため人より大きな責任を預けられて苦労してるけど。

『「もしなかったら」をなかなか想像できない。想像できる機能はあるのに・・・です。皮肉なものですね。』

本当に皮肉。

『鏡の盾』が壊れ(精神障害になって)治療を受けて寛解状態になって初めてその存在に気づく。でも壊れないままで一瞬だけ見る奇跡が起きることもある。

バブーを『姿形は同じだけれども、組み込まれた機能が全く違う2種類のものって感じです。』と気づいたのがそれ。ママがうまく認識できないだけ。

『それは、受動型は、「意味される」ことまでは受け入れられるけど、そのあとの周囲の反応に混乱してしまい、積極奇異型では「意味される」こと自体が受け入れられず、パニックや非社会的な問題行動といった形で周囲に受け止められてしまうということでしょうか?』

この理解は逆。でも180度ひっくり返せばいいだけだから楽。

受動型は「意味される」ことが当たり前で「意味されない」ことが一度としてない。だから「意味される」以外の選択肢を知らないというだけ。そこは「恐怖」の理屈と一緒。だから成長して「意味される」がMAXになってストレスが限界を超えると一転してむずかしくなる。

一方積極奇異はたまには「意味されない」で済むことがあったのかも知れない。代替ツールが『鏡の盾』並に働くことがあって、非自閉症と『仮の盾』越しに「意味しあった」経験があるのかも知れない。そんなふうに一度でも『盾』を学習すれば「間違って」意味されたと感じたときには反撃したくなるはず。

今日は昼寝をしたので夜更かし。

バブーより



 ★



バブーさんへ


【受動型は「意味される」ことが当たり前で「意味されない」ことが一度としてない。だから「意味される」以外の選択肢を知らないというだけ。そこは「恐怖」の理屈と一緒。だから成長して「意味される」がMAXになってストレスが限界を超えると一転してむずかしくなる。

一方積極奇異はたまには「意味されない」で済むことがあったのかも知れない。代替ツールが『鏡の盾』並に働くことがあって、非自閉症と『仮の盾』越しに「意味しあった」経験があるのかも知れない。そんなふうに一度でも『盾』を学習すれば「間違って」意味されたと感じたときには反撃したくなるはず。】

お、なんか一瞬つかまえた感じ。

でも、そう感じた瞬間にするりと指の間を抜け落ちてしまっちゃった。くやしい・・・。


そういえば別件で、メールのやりとりをさせていただいてたときに、チラっとバブーさんはこういわれましたよね。


=====


バブーは受動型だから『私を意味される』のはぜんぜん平気。
困るのは接した非自閉症の人数分だけ『バブー』が出現してしまうため、バブーが人によって『人格(キャラ)』を使い分けているかのように誤解されること。


さらに困るのは、その『使い分けている』という誤解を一部の非自閉症者の人たちが、『まさに自分のことだ』とさらに誤解をし、『自称自閉症者』が増えてしまうこと。


もともとが非自閉症である彼らの発言は『意味しあう』ことが日常である非自閉症の人たちにはとても馴染みやすく歓迎されてしまう。


でも、彼(彼女)らの手になる『自閉ワールド』なるものはバブーの日常生活のどこにも存在しないから『彼(彼女)らが自閉症ならバブーは非自閉症のはず・・・・いやしかし』という激しい【葛藤】が生じる。

自閉症にはこれが死ぬほど辛い。


自閉症のカナーくんが被害を受け、ママが怒りを禁じ得ない特別支援学校は、そうした彼(彼女)らをサンプルとした誤った「自閉症像」を元にしている可能性が非常に高いと思う。


受動型のバブーは「私を勝手に意味するな」とは言わない。
しかし「自閉症を勝手に意味するな!」と言い続けている。


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当時は、バブーさんのおっしゃってたことがよくわからなかったのですが、今回のやりとりで、あのときのバブーさんのセリフがリンクしました。

そして、アスペ君が受動型、カナー君は積極奇異型かな~なんて思いつつ、これまでの息子たちの言動を思い起こしていました。

この夏は、「私が息子たちをどのように意味してしまうか。」という視点で過ごしてみようかと思います。
今回はこのあたりが限界のようなので、ここでストップさせてもらってもいいでしょうか?
毎度毎度、大変なエネルギーを消耗されるにもかかわらず、私にお付き合いくださって本当にありがとうございます。<(_ _)>


~~~~~~~~~~


ということで、今回のやりとりは一旦終了となりました。
次回は、最後の方に話題となった受動型と積極奇異型についてやりとりをさせていただきたいな~と思っています。


明日から主人がお盆休みに入ります。
私たち家族はお盆は関西に帰省します。
いただいたコメントの承認は、多少遅れるかもしれませんが携帯からさせていただきます。
お返事につきましてはパソコンからさせていただきますので、帰宅してからになりますことをお許しください。


●帰省してきました

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毎年、私たち家族はお盆とお正月になると関西にある主人の実家と私の実家に帰省をします。


前半は主人の実家、後半は私の実家というパターンが多いのですが、今回は主人の母がお正月に骨折をしたり腰を痛めたりと体調が万全ではないので、私の実家から日帰りで訪問することになりました。


出発の日、カナー君は朝方に寝て午後1時すぎに起き、出発は午後になり、大阪に到着したのは夜でした。
昔から、なぜか姉やんにだけは、手をつなぎにいって一緒に家の中をウロウロするなど、周囲が驚くほどになついていた(ように見えた)カナー君。
まだ帰宅しない姉やんを探して、「あねやんは?」と言っていましたが、姉やんが帰宅すると、「姉やん・・あはは!」と急に笑いだしたので、周囲はびっくりしました。
ふとんを頭からかぶって、時折姉やんを見ては笑っていました。
姉やんも何やら話しかけながら、言葉遊びのようなやりとりを二人でしていました。


カナー君は、夕食を食べてお風呂に入った後は朝6時まで起きていて、ビデオを見たり、お絵かきをしたり、皆の部屋を訪問してエアコンの温度を18度に設定したりと機嫌はよかったのですが、寝ている間に部屋が冷えたので、家族は皆、喉をやられてしまいました。(^_^;)


カナー君には帰省前から、「○○(主人の実家の地名)のおうち、よるごはんたべます、お風呂はいりません、ねません。おおさかのおうち、おふろはいります、ねます。」と日めくりカレンダーに書きながら伝えてありましたが、出発前も大阪に到着後も、何度も「○○おうち、お風呂はいります。ねます。」といいにきていました。


そんなカナー君の様子をみた私は、「いつもと違うパターンだしな~。なかなか納得できないだろうし、切り替えも難しいだろうな。本人なりに納得しようとして頑張って確認しているのかな~。」などと思っていました。


主人の実家に滞在中も何度か同じやりとりをして大阪の実家へ戻りましたが、心残りだったのか、大阪の実家でも何度も「○○おふろ・・」と繰りかえしていました。

それでも、イライラした様子で服を噛んだりはしましたが、包丁を首にあてたり、私が倒されたりすることはなかったので、気分の起伏の幅は狭まったように感じました。

カナー君の攻撃を覚悟して思わず何度も体に力が入った私は、そのたびに「あれ?」と不思議に思いました。


兄やんは下宿の近所でバイトがあり、大阪には帰省していなかったので、「あにやんは?」と聞いてくるので、「あにやんは○○(地名)のおうち」と説明をすると、同じようなやりとりをいろんな人と繰り返していました。


自宅に戻る日には、最後のチェックとばかりにすべての部屋を回って、エアコンをつけたり消したりしていました。

カナー君は忘れ物があると、取りに戻りたがるので、忘れ物がないかだけ皆で何度もチェックをし、大阪を出発しました。


睡眠リズムはどんどんずれて、最後の日は寝ないままに出発となり、車の中で5時間ほど爆睡していたのでした。


アスペ君は、ほとんど自室で過ごしていて、すっかり大阪になじんでいて、最近、姉が特に報告することがないと言っていた通りだと思いました。


8月になって、諸事情で慌しい我が家は、帰省中も慌しく過ごしていました。

このバタバタについてはまた後日・・・。


●引っ越すことになりました

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カナー君の学校に退学届けを提出した翌週のことです。
珍しく仕事中の主人から電話がありました。


「転勤の内示が出た。」と。
「えぇ~!!」と驚く私。


今の営業所で10年以上異動なしというのは異例の長さだったので、近々だろうとは覚悟していたものの、やはりショックでした。


「なんで今年?カナー君もまだ不調だし、来年にしてもらえないかな~。」とごねる私。


「お前な~、会社というものがわかってないわ。これでも配慮してもらってんぞ。他の社員への内示より早めに知らせてもらったし、異動先も近畿地方やし。今回、断ったら、次回は全国どこになるかわからんって言われてるし、今回は受けるしかないやろ。」と主人。


確かに近畿地方はありがたいです。
アスペ君も大学まで通学可能ですし、長男である主人の両親も高齢になってきたし、何かあったときに車でかけつけられる距離というのは理想です。


それにしても、なぜに今???(;_;)


早速お世話になっている行動援護の事業所さんに報告をしました。
事業所さんも「え?」と驚かれてしまいました。
カナー君のことで、支援計画を練り直してもらっていた最中だったので、引越しまでという期限つきで再度練り直しをしていただくことになりました。


そして、お世話になっている地元の発達障害者支援センターのスタッフさんに連絡をし、転勤先の情報がほしいとお願いをしました。
すぐに動いてくださり、転勤先の情報をメールで知らせてくださいました。


当時、私はかなり動揺してオロオロしていたのですが、皆さん冷静に対応してくださったので、落ち着きを取り戻すことができました。本当にありがたかったです。


更に、転勤先にカナー君とひとつ違いの知的障害のお嬢さんがいらっしゃる大学時代の友人がいたことを思い出し、連絡してみました。


「久しぶり~!!」とおしゃべりをしたあとに本題に・・・。
彼女からも色々と情報をいただきました。


そして、いただいた情報の中から、2つの事業所に連絡をしてみました。


色々お話していくうちに、住む場所によって行動援護を利用できる事業所が変わったりもするので、相性が大事なカナー君のことを考え、行動援護の事業所が多くある市町村に住もうと決めました。

そして、ネットで賃貸を探し始め、「これはいいかな?」と思うような物件を選び、探す条件などを記入する欄に以下のように記入をしました。


『重度の自閉症児が家族にいます。180センチ90キロと大柄で、昼夜逆転、夜中に窓を開けて歌うなど、ご近所のご理解が必要な家庭です。我が家に貸していただける物件がありましたらご紹介ください。』


同様の内容で、20件弱ほどの不動産業者に問い合わせのメールを送りました。


すると、お返事がないか、あるいは「信用問題なので難しいです。」「貸主の許可がおりないと思います。」というメールばかりが届き、中には「わかりました。いい物件がありましたらご紹介しますね。」とありながらも音沙汰なしという不動産屋さんもありました。


そんな中、ある1件の不動産屋さんだけがお電話をくださり、「正直、賃貸だと、なかなか難しいです。借りれても、ご近所さんから苦情がくれば貸主さんから追い出されることになります。ですので、安い中古物件を買われたらどうでしょうか?たとえご近所ともめても、追い出されることはありませんし、賃貸の料金でローンを組むという方法もありますし。」
と助言してくださいました。


「中古購入で・・」と連絡して初めて動いてくださった不動産屋さんもありましたが、すぐに連絡をくださったこの不動産屋さんに、中古物件購入の方向で相談にのっていただくことになりました。


多くの中古物件の中から、我が家が住めそうな物件を探してはメールで送ってくださり、検討しては条件を絞っていく・・という作業を毎日繰り返しました。営業時間がすんでも、夜の11時すぎまでメールでお返事をくださり、気になる物件は現場にかけつけて写真をとって送ってくださったりと、本当によくしていただきました。


お盆に帰省したときには、数件に絞った物件を毎日のように車で見に出かけました。
実際に現地に行ってみると、道幅が狭かったり、写真や地図でみるよりも家が密集していたりと、更に候補が絞られ、最終的には3軒に絞りました。
この時点で時間切れとなり、後は、代わりに私の両親と姉が内覧をしたり、詳しく話を聞いてくれることになりました。家族からの情報も含め、色々検討をし、ようやく1軒に絞って契約の方向で話が進み始めました。


そして、泣く泣く今の家を手放すことにしました。
本当は、留守中は誰かに貸して、大学卒業後にアスペ君が戻りたければ戻って住めばいいと思っていたのですが、売って中古物件の購入資金にあてることにしました。

査定にこられた不動産屋さんを案内しながら、愛着のある我が家を手放す寂しさをひしひしと感じる私なのでした。


ということで、落ち着くまで数ヶ月はバタバタしそうです。
それにしても、結婚してからの引越しは3回目ですが、これまでわりとスムーズな転居が続いたので、今回、こんなにも大変になるとは思っていませんでした。
はぁ~・・・。



●8月のカナー君(その3)

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8月某日


午前1時就寝。午前10時起床。
お昼にモスバーガーを買ってくると、テーブルの上を見渡して「アイスコーヒー」といった。

言われて初めて、いつも買うアイスコーヒーを買い忘れたことに気づく。
「買いにいかされるかな~」と思ったが、怒らなかったし、冷蔵庫の中のアイスコーヒーを飲んでくれた。


主治医の日。
療育機関につくなり落ち着きなくウロウロとした。ハイテンション。
バレリンシロップを1日2ml×2回と増量、ルボックス25㎎1錠を1日2回服用と減量(1日100㎎から50㎎に)することになった。

薬を待っていると特別支援学校時代の同級生親子に遭遇。
お母さんがカナー君に「カナー君。○○学校のNちゃんのお母さんだよ。元気?」などとからんでこられたので、カナー君が怒らないかと母はハラハラした。

学校をフラッシュバックしたのか、少し様子が変だった。


帰宅後も何度かおかしな雰囲気があったが、不機嫌がひどいというほどではなかった。

夜に「★プール、いきます」といって、おでかけブックをもってきて指差した。
引越しで来年はつれていけないので、主人がまだお盆休みなので、明日行くことにした。

行動援護の予定が入っていたので、事業所さんにキャンセルのメールを入れた。



★☆★



8月某日


就寝時間不明。午前2時以降。午後3時50分起床。
遅くなったのでプールは断念。起きてからも眠そう。


しばらくして「★プール」というので、「おそと、よる、くろ。(日が暮れたという意味) ★プール、おしまい。日曜日いきます。」とカレンダーに印をつけて伝えると、怒らずに自室にいった。
イライラやハイテンションはみられなかった。

夕食のときに久しぶりに動きが早く、私たちよりも先に食べ終わった。
こだわりもあるし、大人しいわけではないが機嫌はいい。

バレリンシロップは合っているかも・・・。



★☆★



8月某日


徹夜。
朝食のあと冷凍チャーハンをレンジで温めて食べてから午前10時頃に眠った。

昼食のつもりだったのだろうか?


午後6時半起床。
夜、少しイライラしていた。
カレンダーの日曜日のところを指差して、「★プール、おとうさん、アスペ君、ぼく、いきます。おかあさん、おうち、おるすばん」と言われた。
主人が横で恨めしそうに母をにらんでいた。



★☆★



8月某日


徹夜。
寝てしまう前にと、午前中に★プールへ3人ででかけた。
大きなレジャープールなので日曜日ということもあり、すごく混んでいたらしい。

主人から「めちゃ混んでる。かえりたい。」とメールが届いた。

カナー君は、大きな滑り台に挑戦したが、途中で止まったりしてなかなか滑りおえることができず、6列ほどある滑り台でカナー君の列だけ、渋滞となった。

付き添ったアスペ君が「すみません」と周囲に何度も謝っていたらしい。
下でその様子をみていた主人のそばで、中年のおじさん二人が「あんなやつ、すべらすなよな~」と言ってたらしい。
主人は短気なので、喧嘩になったのでは?と母は心配になったが、主人もそのおじさんたちと同感だったので、だまっていたらしい。


午後3時頃帰宅。

午後4時就寝。午後11時起床。ハイテンション。
久しぶりに服を噛んでイライラしていた。


●8月のカナー君(その4)

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8月某日


徹夜。
朝、フラッシュバックした様子。
「いいかげんにしろー」「~しない」などとブツブツ言っていた。
そのうち、何度か服をかみ、母と目があった瞬間に走ってきて倒された。

何度かイライラモード。イライラは久しぶりな感じ。
昨日と今日は調子が悪そう。
ルボックスの1日量が半分になったせいかもしれない。
午後8時就寝。
午前0時起床。4時間ほどしか寝ていない。



★☆★



8月某日


徹夜。
ハイテンションでイライラしているようなので、朝食後のルボックス25㎎1錠を2錠にした。(75㎎/1日)
行動援護の日。
ルボックスが効いたのか、機嫌はよかったらしい。
帰宅後も穏やか。

午後6時頃、夕食を食べずに就寝。
カレンダーを指差して、引越し後の月の日曜日に「▲▲いきます」と言っててきたため、嘘はつけないので混乱させるのを覚悟で引越しを伝えた。
カレンダーにしるしをつけ、「10月○日。A(現住所地名)おうち、おひっこし。B(引越し先地名)おうち、いきます。Aおうち、バイバイ。▲▲いきません。」と。
伝わったという感じはしないので、しばらくは説明を繰り返す必要がありそう。



★☆★



8月某日


午前3時頃起床。
一人で入浴をして、テーブルに用意しておいた夕食をレンジであたためて薬を飲んでいた。
午前8時すぎに朝食と薬。
不安定なときは、出されるままに2錠飲んでくれたが、落ち着いた今は、2錠は飲んでくれなかった。

主治医に電話で相談。明日、ルボックスの50㎎錠をとりにいくことになった。

自宅の庭でプールに入りたがったが、引越しがあるので捨てていて、すでになくなっていた。
すると、「お母さん、お買い物、プール」といわれ、買いにいった。
午後から機嫌よさそうにプールで過ごしていた。



●8月のカナー君(その5)

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8月某日


午後10時~11時に就寝。午前6~7時頃起床。機嫌はいい。
朝食後のルボックスは25㎎。
アスペ君にカナー君との留守番をお願いして、母だけ療育機関へ。

ルボックスを50㎎錠で処方していただく。
調子を崩したら服用するなど、様子を見ながら来週まで飲ませることになった。

行動援護の日。
機嫌よく過ごしていたらしい。
独り言が多かったとのこと。
夕方、少しイライラしたものの、しばらくしたらおさまった。
        
夜になって、「Bのおうち、ビデオ」というので意味がよくわからなかったのだが、なんとなく、ビデオを引越し先に持っていくか知りないのかな~と思い、「ビデオ、Bのおうち、お引越しするよ。」というと納得したのか自室へと戻っていった。



★☆★



8月某日


午前3時~5時の間に就寝。午前9時半起床。
日中一時支援の日。(行動援護の事業所とは別。毎年夏休みだけ利用)
調子は悪くなかったが、念のためルボックスは50㎎錠を飲ませた。

日中一時支援では、母がよかれと思って持たせたDSをみてパニックをおこし、「おうち・・・」と外の門まで走っていったらしい。
DSはいらなかったようで、余計なことをしてしまったと反省。
落ち着くまでに30分はかからなかったらしい。
帰宅後は穏やか。
庭で収穫したブルーベリーと飲むヨーグルトをミキサーにかけてジュースにした。
カナー君は出来上がったジュースを飲んだが、その様子を見ていなかったのに、夜になって自分で冷蔵庫からブルーベリーとヨーグルトを出してきてミキサーでジュースを作っていたのでびっくりした。(バナナジュースのときは、作り方をみてから作った。)



★☆★



8月某日


午後10時~11時入浴せずに就寝。
午前9時起床。(寝てるので母が消したテレビが、朝にはついていたので、夜中に起きたもよう。眠りは浅いのかもしれない。)

入浴して朝食。ルボックスは25㎎錠。
やはり、引越しがきになるのか、「○月○日、Aのおうち、帰ります。」というので、紙を3枚用意して、1枚に「Aのおうち」、もう1枚に「Bのおうち」、さいごに「おおさかのいえ(実家のこと)」と書いて、小さなメモに家族の名前を1枚に一人ずつ書いたものを4枚用意し、「アスペ君は、9月○日、おおさかの家、いきます。」とAの紙から大阪の紙へ移動、「○月○日、おとうさん、おかあさん、ぼく、おおさかのいえ、いきます。Aのおうち、ばいばい」といいながら、大阪のいえに移動。「○月○日、おとうさん、おかあさん、アスペ君、ぼく、Bのおうち、いきます。」と伝えてみた。

一通り説明したあと、カナー君は「Aのおうち、かえります」というので、なかなか納得してもらうのは難しそう。

その様子をみていたアスペ君が、「そらそうやろ。俺だってまだ、ショックから立ち直れてない。ここの人たちと別れるのは受け入れがたいし。」といっていた。



●帰省中のアスペ君

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アスペ君の帰省はあっという間に終わりが近づいてきました。


私の毎日は、アスペ君のお陰で随分と動きやすくなりました。
カナー君の見守りをお願いして、さっと買い物にいけたりするので、本当に助かりました。
メールでおつかいを頼まれることが多かった主人もアスペ君のお陰で頼まれることが減り、楽になったようです。


近所のお友達は皆留守で、帰省当初は家で過ごすことが多かったのですが、8月後半に皆が帰省してきたので、早速お泊りに出かけ、徹夜でおしゃべりやゲームをしてきたようです。


親の会の活動にも参加をし、メンバーと過ごすことができました。
大学のことを話したり、メンバーの近況を聞いたり、ゲームの話で盛り上がったりしたそうです。


車の運転の練習もしました。
人をひきかけたり、駐車場に入るときに歩道に乗り上げたりと、横で乗っているとハラハラドキドキの連続ですが、何度か練習するうちに少しずつ慣れてきたようです。


ゴールデンウィークと違い、長期間の滞在なので、しばらくすると私と軽い言い合いもするようになりました。


たいていは、二言三言でどちらかが折れて終息するのですが、先日は朝からなぜか不機嫌なアスペ君と、引越しのことでバタバタしている私の苛立ちがぶつかり、きっかけは思い出せないくらい小さなことだったのですが、長い言い合いへと発展しました。


そのうち面倒になった私が、


「もう!めんどくさいな~。ああいえばこういう星人なんやから。」というと、


「母さんこそ感情星人じゃないか。人のことをいえるのかよ。やれやれ。」と言い返され、


「だから、感情星人には言い返さずにだまってくれたらありがたいんやけど。」と私が更に言い返すと、


「はいはい、わかりました。だまります。」とアスペ君が折れる形で終息したのでした。



こうしたやりとりのときは、私は感情から言葉がわいてきて口から飛び出してしまうのですが、アスペ君の場合は私の言葉に反応して言葉が出るけれども、そこに感情は含まれていないので、アスペ君の言葉を私のものさしで勝手に感情もくっつけて解釈すると、どんどん泥沼化するのです。


アスペ君の言動から、「反抗的だな~」などと勝手に反応してしまう私自身の感情をそぎ落とすのにはエネルギーが必要で、私の精神力の調子次第となってしまうため、私が不調なときは、冷静なアスペ君のほうが折れてくれます。


そして、そんなアスペ君に後ろめたさと感謝を感じる私は、アスペ君の好物を用意することで、アスペ君のご機嫌をとろうとするのですが、そんな私にアスペ君は、


「母さん、もしかしてさっきのこと、気にしてるの?別に気を使わなくていいよ。俺は母さんのことわかってるから。『またか』とは思うけど、腹が立ったり傷ついたりはしてないし。」というのでした。


なんというか・・・

「ははぁ~、まいりました。<(_ _)>」って感じです。



休止します

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ご無沙汰しています。
不慣れな携帯からの投稿なので、読みにくかったらすみません。

引っ越しはなんとか無事に終えました。
といっても、カナー君への影響は想像以上に大きく、落ち着くまでに色々とありましたし、まだ完全に落ち着いたわけではありません。
彼なりに必死で頑張っている様子を見守るしかない状況です。

そして、私も色々ありました。
詳しくは書きませんが、病名がはっきりと診断されました。
そして、療養生活に入ります。
といっても、普段の生活になんら変わりはなく、気をつけることが増えたというだけですが。

ということで、気をつけようとしても、自ら勝手にエネルギーを大量に消費してしまうブログやネットサーフィンを控えることにしました。

息子たちの記録は毎日つけているので、落ち着いたら再開するかもしれませんし、しないかもしれません。
あるいは、年に数回、ポツポツと公開するかもしれません。

バブーさんやキルケさんとメールでやりとりしているうちに気づいた、やりかけで気になることもあるのですが、熱中してしまうのは目に見えているので、やむなく強制終了をします。

どうしても長く生きていたいのです。
あ、癌とかではないのでご心配なく。

訪問してくださった皆様、ありがとうございます。
よければ、過去の記事を読み直してみてください。
自閉症者を理解したい非自閉症者の方は、バブーさんやキルケさん、モタさん(chipさん)のコメントをよく読んでみてください。
自身を振り返るヒントが沢山詰まっています。
ゆっくり時間をかけて、内省の練習をしてみてください。
自分が信じているものを疑うと、視野が広がります。
ただ、かなりエネルギーを消費するので無理はしないでくださいね。
心や体を壊さないために、保留することも大事です。

なお、今日より、コメントできないように設定をしました。
おせっかいな性格なもので、お返事しないといけないって、気になってしまうので。

アメンバー承認はさせていただきますが、メッセージにお返事は致しません。

どうか皆さんもご自愛くださいね。





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